社員に負担を強いるDXはなぜ失敗するのか
DXを進めようとしている企業で、次のような取り組みを見かけることがあります。
「まずはデータを集めましょう」
データドリブン経営、データ分析、KPI管理。 こうした言葉とともに、現場にデータ収集が求められます。
しかし、その方法が間違っていると、DXは逆効果になります。
今回は、実際に支援した企業で起きていた事例を紹介します。
手作業でExcelにデータを入力するDX
ある企業では「全社的にデータ分析を進める」という方針が出されました。
各部署に対して次のような指示が出されました。
- 業務データを記録する
- 作業時間を記録する
- データをExcelにまとめる
問題は、その企業ではまだProcess Miningのような自動的にデータを取得する仕組みが整っていなかったことです。
そのため、次のような運用が行われていました。
- 社員が手作業で作業時間を記録する
- 作業内容をExcelに入力する
- チームリーダーが週末に1時間かけてグラフ化する
一見すると、データ活用に向けた取り組みのように見えます。
しかし、この方法には大きな問題がありました。
問題1:データが正しく集まらない
手作業によるデータ収集は、どうしても精度が下がります。
人間は必ずミスをします。
- 入力を忘れる
- 記録が曖昧になる
- 後からまとめて入力する
この企業でも、実際に取得できていたデータは約60%程度でした。
つまり、分析の元になるデータ自体が不完全だったのです。
問題2:なぜデータを集めているのか分からない
さらに大きな問題がありました。
チームリーダー自身が、なぜこのデータを集めているのか分からなかったのです。
グラフは作成していましたが、その数字をどう使うのかが定義されていませんでした。
つまり
- KPIがない
- KGIがない
- 改善目標がない
という状態でした。
これでは、どれだけデータを集めても意味を持ちません。
結果として起きたこと
この取り組みの結果、現場では次のような状況が生まれていました。
- 従業員は無意味な作業をしていると感じる
- 入力作業が負担になる
- 改善につながらない
- 「やった感」だけが残る
つまり
DXの名のもとに、無駄な業務が増えてしまった
のです。
DXは社員に負担を増やすものではない
DXの本来の目的は何でしょうか。
それは
業務を効率化すること
です。
しかし今回の事例では逆のことが起きていました。
- 業務が増える
- 手作業が増える
- 意味が分からない作業が増える
これはDXではありません。
単なる業務の追加
です。
本来あるべきデータ活用の順序
DXでデータ活用を進める場合、本来は次の順序で進める必要があります。
- KGI・KPIを決める
- 必要なデータを定義する
- 自動で取得できる仕組みを作る
- 分析と改善を行う
多くの企業では、この順序が逆になっています。
とりあえずデータを集める
という状態です。
しかし目的のないデータ収集は、組織を疲弊させるだけです。
DXの失敗は技術ではなく経営の問題
今回の問題は、現場ではありません。
経営側の指示と設計の問題
です。
データを取ること自体は、これからの経営にとって非常に重要です。
しかし
- 目的がない
- 活用方法がない
- 仕組みがない
状態で始めてしまうと、DXは現場の負担になります。
DXを成功させるために重要なのは
データを集めることではありません。
データを活用できる設計を作ること
なのです。