「使われないシステム」が生まれる理由——300万円の投資が無駄になった話


半年後、誰もログインしていなかった

ある製造業の中小企業が、顧客管理システム(CRM)を導入しました。費用は初期費用と月額込みで年間300万円超。社長は「これで営業の見える化ができる」と期待していました。

導入から半年後、社長はふと気になってシステムの管理画面を開きました。

最終ログイン日時を確認すると、ほとんどの社員が1〜2ヶ月前から一切ログインしていないことが分かりました。

「なぜ使っていないのか」と営業部長に聞くと、返ってきた答えはこうでした。

「入力する時間がないんです。それより直接お客さんのところに行った方が早いので」


「使われないシステム」は珍しくない

この話は特別なケースではありません。ITコンサルタントへの調査では、中小企業が導入したシステムの約3割が、1年以内に実質的に使われなくなっているという結果があります。

なぜこうなるのでしょうか。


「使われない」4つの理由

① 現場の業務フローと合っていない

システムの機能と、現場の実際の仕事の流れが合わない場合、社員は「わざわざシステムに入力する意味が分からない」と感じます。CRMに顧客情報を入れるより、自分のスマホのメモの方が使いやすい、となってしまう。

② 「誰のためのシステムか」が明確でない

「経営者が見たいデータを集めるためのシステム」が現場に押しつけられると、社員にとってメリットがありません。入力作業は増えるが、自分の仕事は楽にならない——これが不満の根本です。

③ 導入後のフォローがない

システムを入れて終わりにしてしまうと、使い方に迷った社員は自然と以前のやり方に戻ります。「使い続ける理由」がないからです。

④ 既存のやり方との並行運用が続く

「念のため、前のやり方でもデータを残しておこう」となると、社員は2つの作業をすることになります。これは業務が増えるだけで、誰も得をしません。当然、新しいシステムは脱落します。


本当の問題は「ツール選定」ではない

多くの場合、使われないシステムの問題は「ツールが悪い」のではありません。

問題は**「なぜ導入するのか」が明確でないまま、ツール選定から始めてしまったこと**にあります。

正しい順序はこうです。

  1. 課題を明確にする——何に困っているか、何を解決したいか
  2. 解決策を考える——その課題にはどんなアプローチが有効か
  3. ツールを選ぶ——解決策に合ったツールを選定する
  4. 現場と一緒に設計する——使う人の業務フローに合わせて設定する
  5. 小さく試して、定着させる——一部の業務・一部の人から始める

多くの会社では1〜2のステップが飛ばされ、いきなり3から始まります。


「現場が使える」設計にする

システム導入で成功している会社には共通点があります。

現場の声を先に聞いていることです。

何が不便か、どんな情報があれば仕事がしやすいか、どんなタイミングで入力できるか——現場の人間が実際に使えるかどうかを、設計の最初から考えています。

逆説的ですが、経営者がほしいデータより、現場が使いやすいシステムを優先した方が、結果として経営者がほしいデータも集まります。


システムは「買って終わり」ではない

重要なのは「どのシステムを選ぶか」より「どう使い続けるか」です。

300万円を使ってゼロになる前に、問うべき質問があります。

「今まさに現場が困っていることは何か」「そのシステムを使えば、現場の仕事は楽になるか」「導入後、誰がフォローするか」

この問いに答えられないまま導入するシステムは、高確率で使われなくなります。


業務改善のためのシステム選定と、失敗しないITツール活用の方法は近日公開のホワイトペーパーで解説します。